本 FIREがわかる3冊
最近日本でFIREムーブメントが注目されている。金融業界にとってたいへんありがたいムーブメントなので、話題になることが多くなっている。ネット上にも色んな解説が上がっている。記事には肯定論と否定論があるが、FIREの本来の目的、自分らしく生きるということは高く評価されているようだ。
FIREは自分が望む生活を目指すもの
金融業界は、とうぜんながら肯定派で資産運用を上手くやればFIREはできるという。FIREの基本は、必要な資産を形成した後に4%の利率で運用して得られる不労所得で生活する。否定派は、そもそも必要な額の資産形成自体が無理であり、更に4%で運用できる金融商品は日本に無いという。
日本で年金暮らしするとき、余裕のある生活に月額31万円が必要とされる。月額31万円は年間372万円。372万円を4%の利率で得るためには、元金は25倍の9300万円が必要になる。約1億である、1億の資産(株・有価証券)を貯めるのは簡単ではない。
議論は、もっぱら9300万円が貯められるか、4%の資産運用は可能かだ。老後資金の2000万円が貯められないのに9300万円が貯められるわけがない、と思うのは当然である。しかし何事も始めなければ始まらない。FIREも同じで始めなければ何も得られない。
とりあえずFIREの本を読むくらいをやってみる価値はある。FIREの理念、挑戦、資産の使い方を教えてくれる三冊がある。
FIREについてお勧めの三冊
米国のFIREの著書は、資産の運用方法に多くのページが割かれるが、同じくらい目的について書かれている。その目的は以下のようになる。
・お金というものを理解する。
・お金に追われる生活から抜け出し、自分の望む人生を手に入れる。
・お金から自由になれる資産を形成する。
日本では、資産形成は可能か、早期に退職した後に何をするのかと本質以外の議論がもっぱらになり、FIREの精神は置いてけぼりになっている。FIREの本質を知ろうとすれば米国の本が良いようだ。
FIREは、単にお金を節約したり貯めることを目指すものではなく、生き方を変えようとするものである。贅沢を求めるためではない。自分が望む人生を送るには、まずお金から自由になる必要がある。その意味と実践方法を教えるのがFIREである。なかなかに厳しい実践方法であるがそれを知っても損はない。
お金か人生か Your Money or Your Life
ジャッキー・ロビン+ジョー・ドミンゲス(著) 岩本正明(訳) ダイアモンド社
あなたのお金をとのかかわり方を根本から変え、あなたが経済的自立に到達する手助けをすることです。その結果、あなたにとって最も貴重な資源ー時間ーを自由に使えるようになります。そしてより幸せで、より自由で、より意味のある人生を送る余裕が生まれるのです。
お金をか人生か
FIREムーブメントの源流である。1990年代の米国は多数の人がローンの返済に苦労していた。そんなときに、ジャッキーとドミンゲスは、ローン生活から抜け出し自分の望む生活をおくるための具体的な方法を提案した。大勢の人が共感し一大ムーブメントとなる。その本が現代に合うよう加筆されて復刻された。
「お金か人生か」ではお金を「生命エネルギー」と考える。生命エネルギーはすなわち寿命であり有限である。儲けることのできるお金もまた有限になる。有限と分かるとお金に対する意識が変わり、節約は容易になり効率よく資産を増やそうとする。やがて、お金の束縛から抜け出せば、自分が望む人生を見つけられるのだ。
実践法は具体的な9つのステップになる。最初のステップにある「現実を直視する」「ノーシェイム・ノーブレイム(恥じない・責めない)」がキーワードになる。ステップ毎に出される課題をこなしていくとFIREが達成できるようになっている。読んでみて損のない一冊。
本 お金か人生か Your Money or Your Life FIREの原点
FIRE 最強の早期リタイア術
クリスティー・シェン&プライス・リャン(著) 岩本正明(訳) ダイヤモンド社
FIREの実践の書である。中国の極貧の村に育った一人の少女が、両親とともにカナダに渡り苦労して大学を卒業しFIREを達成する記録である。ハンガーを使った洋服の節約法から、投資マネジャーの否定まで具体的な資産形成法が書かれている。彼女が無一文から意志と努力でFIREを達成した物語は抜群の説得力がある。
彼女は日本にある「資産形成は無理」の議論を虚しくする。FIREは強い意志があれば達成できると証明している。女性の視点から、節約法や子供について書かれていてFIREをめざす女性の良い参考になる。無一文からFIREを目指そうと思う人にぴったりの一冊。
本 FIRE 最強の早期リタイア術に中国のお金の意識が出会ったら
DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
ビル・パーキンス(著) 児島修(訳) ダイヤモンド社
FIREの進化形である。筆者は「Your Money or Your Life 」を読み、資産形成に励むが、友人が無理をして欧州へ旅行した思い出を聞き、人生にその時期でしかできないことがあるのに気づく。人生が終わりに残って欲しいものは、お金か思い出か。筆者は思い出が良いと考える、死ぬ時に資産がゼロになっても良いではないか、必要な資産を確保したら残りは思い出作りに使おうではないか。
そう提案する筆者に色んな疑問が寄せられる。資産を子供に残したいとの質問には、残すより生前に渡せば良い。子供は一番必要な時期にお金を受け取れる、親も生きて感謝を受けることができる、どちらも嬉しいではないか。人を幸せにする発想の転換が随所にある。
「アリはいつ遊ぶのだろうか」の問いかけから始まる資産形成だけでなく使い方を教えてくれる一冊。
著者たちは、FIREして楽しい生活を送っている。全く遊んでいるわけで無く、自分のやりたい仕事や活動をしている。若い時に苦労して、今自分が送りたいと思った人生を歩んでいる。
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