本「 最強の早期リタイア術」 極貧の少女がFIREを達成した方法  

2024年11月15日

筆者クリスティー・シェンは中国の村、それも極貧の村の生まれた。7歳のときに両親と共にカナダに渡る幸運にめぐまれた。彼女はそのチャンスを逃さずカナダで努力を積み重ね31歳でミリオネアになりリタイアをした。現在はパートナーと世界旅行を楽しみながら作家としても活躍している。

Young woman using laptop computer on a beach. Freelance work concept

中国の極貧の村に生まれた少女が、どのようにしてアメリカで百万長者になったのか。彼女自信がどのような境遇でもFIREは実現可能なことの証拠である。彼女が最初に持っていたのは極貧の村で養った強い信念だけだった。強い意志をもち実践法を知ればFIREは可能なのだ。

30代で経済的自立を達成するための全技術

FIREはFinancial independence retire earlyの略である。節約と投資で金融資産を増やし利子や配当で暮らせるようにして早期に仕事を辞めて自由に暮らすことをいう。この本はFIREの源流「Your money or your life」や「Early Retirement Extreme」の下流にあり、彼女のブログ「Mr Money Mustache」と同じく最新の実践書になっている。

最速でお金から自由になる究極メソッド Financial independence retire early

この本は能天気な自己啓発の本ではありません。「自分のことを金持ちだと思え」とか、「ポジティブに考えよう」とか「宇宙のエネルギー調和せよ」とか、そういったことがカギではりません。私は、そういった類の本を読み、彼らのアドバイスに従ってみましたが、どれもうまくいきませんでした。

FIRE 最強の早期リタイア術 クリスティー・シェン&プライス・リャン(著) 岩本正明(訳) ダイヤモンド社

クリスティーは、毛沢東の大躍進計画によって大勢が犠牲になった村で生まれた。一日44セントの暮らしの中で、古い中国の教え「吃苦」を学んだ。「吃苦」は痛みを全て飲み込むことである。中国の農民は「吃苦」によって圧政に耐えてきた。お金の重要性もその教えと共に学んだ。中国の庶民は政府を信用しない。信じるのはお金と一族だけだ。

7歳のときに幸運がやってくる。中国の政策によって、両親と家族がカナダに移住できた。カナダでもお金の大切さと「吃苦」を忘れない、缶詰の底に残ったシロップをおやつにしながら勉強に励み、創造力や適応力、忍耐力と回復力を身に付けた。

夢は作家だったが、貯蓄に有利なのはエンジニアと判断して大学のコンピューター・エンジニアリングを専攻する。お金を貯めるのを優先したのだ。

夕方のひととき、何を思う

FIRE 最強の早期リタイア術 30代で経済的自立を達成するための全技術

クリスティー・シェン&プライス・リャン(著)   岩本正明(訳) ダイヤモンド社

経済基盤の確立が夢につながる

彼女は、お金そのものを目的にしないが、お金以外の余計な事は考えないようにした。将来の夢を叶えるために若いうちは苦労してお金を貯めようと考えたのだ。目標は人生を楽しめるうちにリタイアして歓びを得ることにした。

彼女の資産形成方法は多彩で徹底している。ハンガーを使った洋服の節約法、株式市場の暴落を乗り切る方法、インデックス投資の活用などだ。その反面、4%ルールの課題、子供を持つこと、早期リタイアのマイナス点も率直に述べている。

彼女は中国時代に覚えた「吃苦」に従い自分以外は信じない。資産形成法も自分で考える。借金は福利の吸血鬼、ファンドマネジャーは銀行強盗、住宅資産は投資対象ではないと厳しく批判する

「吃苦」の精神が米国流の資産形成法に出会うと大きな成果を上げた。中国人の強烈な欲望は、欧米の経済市場でとんでもない力を発揮している。14億人の需要を餌に、変動相場制がルールの経済に実質的な固定相場制を認めさせている。他人のフィールドなのに自分のルールで戦うメンタルの強さは驚くしかない。

彼女は、作家の夢を一旦諦めたがブログをきっかけにベストセラー作家になる。若いうちに経済基盤を固めれば、夢を達成する時間は残っている。日本は、夢を叶えるために赤貧に甘んじ下積みで苦労するのが普通と考える。それと、お金を貯めて夢を叶えるという考え方は随分違う。色んな考え方があるものだ。

中国人のお金の考え方は凄い

彼女は米国の資産形成法に精通しており、提案される具体的な実践法は評価が高い。一番評価されるべきはその強い意志だろう。精神論は述べないがその強さは随所に現れる。彼女のような意志力があれば、どのような分野でも成功したと思える。強い意思を持つ者だけがFIREを達成できるのだ。

中国人のお金にたいする思考は強烈である。徹頭徹尾自分中心で他人や政治は信用しない。日本特有の気配りや世間さまとは無縁である。自由主義経済の慣行を破るのも平気だ。日本でFIREを達成できるかの議論が続いているが強烈な意志があれば達成は可能だ。この本は、FIREの達成法を学べると共に、何につけても甘い日本人の姿を教えてくれる一冊である。