本 「お金か人生か Your Money or Your Life」 FIREのバイブル 

2024年2月27日

「Your Money or Your Life」はFIREムーブメントのバイブルと呼ばれる本である。その本が近年のFIRE人気を反映して初版に加筆して再発刊された。今やクレジットカードや個人ローンは当たり前だが、少し前までは借金と同じだと日本人は嫌がったものだ。実際それは借金だから、使う人が増えれば返済に苦労する人が増える。「Your Money or Your Life」が出版された1992年の米国社会は、借金の返済に追われる人でいっぱいだった。。

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FIREムーブメントの源流 お金に縛れない生活を目指す

その頃、多くの人がローンを使って家や車を買ったり豪華な旅行を楽しんでいた。収入が増えても借金を返えさずに、更に増やして贅沢を楽しんだ。お金を使った満足感はすぐに無くなる。するとまた借金をする繰り返しだった。

ロルフ・ドベリの「Think Clerly」に「嬉しかったのは買った時と手放した時だけだった」という高価なヨットを買ったお金持ちのエピソードがある。しかし、多数の人がその短い満足感のためにローンやクレジットカードを使い、いつしか借金返済のために働くようになった。

そんなとき、ヴィッキー・ロビンとジョー・ドミンゲスは、借金の支配から抜け出し精神的に豊かな生活をおくる方法を提案した。本は出版されるとたちまち大人気になりFIREムーブメントを起こした。

お金は、生命エネルギー

今より多くのお金を稼ぐといった意味ではありません現在、そして将来に渡って、自分の理想の人生を送るためには、どのくらいの金額が自分にとって十分なのかを知ることです。

お金か人生か Your Money or Your Life  ヴィッキー・ロビン ジョー・ドミンゲス(著) 岩本正明(訳) ダイヤモンド社

「Your Money or Your Life」の教えは、借金生活から抜け出すための巧妙な返済法や、単なる倹約術、投資のノウハウだけではない。それだったらムーブメントにならなかった。読者は「お金の本質」「儲ける」「使う」「節約」の本当の意味を学び「お金に縛られない自由な人生」を手に入れることができる。

基本は、お金の本質は生命エネルギーだと知ることだ。お金を儲けるためには、自分の生命エネルギーを一定時間使わないといけない。お金は生命エネルギーの対価なのだ。人の生命エネルギーは寿命分しかない。寿命は有限であり、得られるお金もまた有限である。

限られた生命エネルギーとお金は同じだから貴重であると分かる。それを自覚するともったいなくて無駄使いができなくなる。お金を使う意識が変化し節約は辛くなくなり、本当に買いたい物にお金を使うようになる。

筆者はお金の意識を変えるための九つのプログラムを準備している。一つの課題をクリアする毎に、意識が変っていく。課題をこなすのは大変だが、成功した実例を示し、達成を助け合うコミュニティを紹介し、成果を可視化してモチベーションを維持する工夫がされている。

9ステップを実践しよう  ノーシェイム、ノーブレイム

実践では「ノーシェイム、ノーブレイム」が重要になる。「恥じない。責めない」の意味である。まず過去に使ったお金や儲けたお金を分析する。分析の過程は後悔や恥ずかしさを強く感じる。そのときこの言葉が重要なマントラ(指針)になる。

9のステップはタイトルだけで内容が分かる。

1、現時点の自分の貸借対照表(BS)作り。

2、自分のBSをもとに実質的時給を計算。

3、毎月の収支を把握、生命エネルギーに換算。ノーシェイム、ノーブレイム。

4、生命エネルギーに見合う充足感や満足感(価値)を考える。

5、生命エネルギーの使い方をウォールチャートで可視化。

6、お金の使い方、意識の変化を実感。

7、仕事と生命エネルギーの関係を理解。

8、節約したお金による投資。経済的独立(FIRE)を達成。

9、経済的独立後の投資。ここまで来たら自由な人生。

老子「足るを知るものは富む」

ステップ1のこれまで人生のBS作りは精神的に大変にきつい。「ノーシェイム、ノーブレイム というマントラ」がないとできない(年をとるほど難しくなる)そこで望んでいない物にお金を使ってきたこと、ローンを組んでまで買う必要がなかったものがとても多い事に気づくのである。

「生命エネルギーを無駄使いしてきた後悔」がFIREの出発点になる。それを動機に、プログラムを進めていくと自分が本当に求めていた人生に気づく。FIREは単にお金を節約して貯めるだけではない。貯めるのだけを目的にするなら、リタイア後の人生はすることが無い辛いものになる。お金はある、働かなくても良い、だが何をしたいか分からない、はあんまりだ。

自分の望む人生が分かれば、人生を楽しくおくれるしお金も惜しくなく使える。その望む人生の見つけ方がこの本にある。人はお金の前で盲目になりやすい、だから導く光が必要だ。この本がその光なのである。

老子の言葉に「足るを知るものは富む」がある。人の欲望はきりがない、分相応のところで満足ができる者は心が富んでいる。FIREはお金を貯めて経済的な独立を目指すが、単にお金を貯めるだけではない。「分相応で満足できる心」を目指すのだ。老子はそのやり方をほのめかすだけだが「 Your Money or Your Life 」は実践法を教えてくれる。

FIREは、現在も進化し続けている。「FIRE 最強のリタイア術」から「DIE WITH ZERO」も合わせて読むと良みたい。

Posted by 街の樹