本 「お金か人生か Your Money or Your Life」 FIREのバイブル
FIREムーブメントのバイブルと呼ばれる「Your Money or Your Life」が初版に加筆して再発刊されている。近年のFIRE人気を反映したものだろう。この本の初版が出版された1992年頃の米国社会は借金の返済に追われる人で溢れていた。ヴィッキー・ロビンとジョー・ドミンゲスはそんな人々に借金の支配から抜け出し精神的に豊かな生活をおくる方法を提案した。その本は出版されるとたちまちベストセラーになりFIREムーブメントが起った。

FIREムーブメントの源流 お金に縛れない生活を目指す
日本人は少し前までクレジットやローンを借金と同じだと嫌った。今はそんなふうに考える人はいない。ただ事実的には借金だから利用する人が増えれば、返済に苦労する人が増えるのは道理である。日本でも90年代のアメリカの人のようなに苦しんでいるが増えている。
90年代の米国は多くの人がローンを使って家や車を買ったり豪華な旅行をした。収入が増えても借金を返済をしないで更に借金を増やして贅沢を楽しんだ。お金を使って得た満足感はすぐに消えてしまう。ロルフ・ドベリの著書「Think Clerly」にこんなエピソードが書かれている。大金持ちが高価なヨットを買った。彼がヨットを売却したときの感想である。「嬉しかったのは買った時と手放した時だけだった」
人々は買った瞬間に満足感がなくなるので、満足を求めて新しいものをまた買う。そんな繰り返しに陥っていた。いつしか借金の返済のために働くような状態になっていた。「Your Money or Your Life」はそんな多くの人を救った。
お金は、生命エネルギー
今より多くのお金を稼ぐといった意味ではありません。現在、そして将来に渡って、自分の理想の人生を送るためには、どのくらいの金額が自分にとって十分なのかを知ることです。
お金か人生か Your Money or Your Life ヴィッキー・ロビン ジョー・ドミンゲス(著) 岩本正明(訳) ダイヤモンド社
「Your Money or Your Life」は、借金生活から抜け出すための巧妙な返済法ではなく、単なる倹約術や投資のノウハウを教える本ではない。それだけだったらムーブメントは起らなかっただろう。筆者は読者に「お金の本質」「儲ける」「使う」「節約」の本質を教え「お金に縛られない自由な人生」を送る方法を提案する。その核になる考えは、お金は人の持つ生命のエネルギーから生み出されるということである。
お金を儲けるためには自分の生命エネルギーを一定期間使わないといけない。お金は生命エネルギーの対価である。当たり前だが人の生命エネルギーは寿命分しかない。だから得られるお金もまた有限になる。お金と自分の生命エネルギーは同じものと知ると、お金がたいへん貴重なものだと思えてくる。それを自覚すると無駄使いをしなくなり節約ができるようになる。本当に使いたい物だけに使うようになる。

9のステップ 大切なのは「ノーシェイム、ノーブレイム」
この本に「お金の意識を変えるための九つのプログラム」が準備されている。課題をクリアする毎に意識が変っていく仕組みになっている。一つ一つの課題をこなすのは結構大変である。しかし成功した実例や達成を助け合うコミュニティ、成果を可視化する方法が示されモチベーションが維持できる。
最初のステップで「恥じない。責めない」を意味する「ノーシェイム、ノーブレイム」が出てくる。まず最初に、過去に使ったお金や儲けたお金を調べて自分の貸借対照表(BS)を作成しないといけない。この作業は過去のムダ遣いや恥ずかしい行動を思い出して辛い。そのとき助けてくれるのがこの言葉である。このマントラ(指針)が、恥じることはなく前に進めと鼓舞してくれるのだ。
9のステップは以下に通りである。タイトルだけで内容が分かる。
1、現時点の自分の貸借対照表(BS)作り。
2、自分のBSをもとに実質的時給を計算。
3、毎月の収支を把握、生命エネルギーに換算。ノーシェイム、ノーブレイム。
4、生命エネルギーに見合う充足感や満足感(価値)を考える。
5、生命エネルギーの使い方をウォールチャートで可視化。
6、お金の使い方、意識の変化を実感。
7、仕事と生命エネルギーの関係を理解。
8、節約したお金による投資。経済的独立(FIRE)を達成。
9、経済的独立後の投資。ここまで来たら自由な人生。

老子「足るを知るものは富む」
ステップ1のBS作りで、自分が望んでいない物にお金をたくさん使ってきたこと、ローンを組んで買う必要がなかった物が多いことに気づく。そして激しい後悔が押し寄せる。なんと生命エネルギーを浪費してきたか。「ノーシェイム、ノーブレイム」 というマントラが唱えて耐えるのである。生命エネルギーを無駄使いしてきた後悔が意識改善の出発点になる。意識改善が進むと、自分が本当に欲しいものが分かり求めていた人生が発見できるのだ。
FIREがお金を節約して貯めて働かないことだけを目的とするならリタイア後の人生はやることが無いつまらないものになるだろう。働かなくても良いがしたいことが無いのは辛い。反対に自分の望む人生を見つけられればお金に頼らず楽しい人生をおくれる。その人生の見つけ方がこの本にある。
人はお金の前で盲目になる。導く光が必要がいる。老子は「足るを知るものは富む」と言った。人の欲望はきりがないが、分相応のところで満足ができるのは心が富んでいるという意味だ。FIREも「分相応で満足できる心」を目指す。老子はやり方をほのめかすだけだが「 Your Money or Your Life 」は実践法を教えてくれるのである。
FIREは進化し続けている。「FIRE 最強のリタイア術」から「DIE WITH ZERO」も合わせて読みたい。






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