本 「数字を数字を読めない文系バカが日本をダメにする」
高橋洋一氏は、もと大蔵省(現財務省)の官僚である。小泉政権時代に規制改革を進めたことで有名になり、現在はコメンテータとして活躍している。Xでも頻繁にポストし多くの共感を得ている。意見には緊縮財政政策や借金1千兆円を主張する財務省の批判が多い。最近はコロナの現状を「海外に比べるとさざ波」「屁みたいなもの」と発言してマスコミの大バッシング受けて内閣官房参与を辞任した。
高橋氏は東京大学数学科を卒業して大蔵省に入省した。大蔵省は、よく知られているように東大法学部卒が主流であり数学科卒は極めて少い。数学者は、大蔵省に入ってみるとそこが文系バカの巣窟だったことから、日本が駄目になったのは大蔵省や社会に萬延する文系バカのせいと気付く。
日本がコロナワクチンをつくれない理由
筆者は、文系バカの弊害の例として、なぜ日本はコロナワクチンができないかを取りあげている。米国を始めワクチン開発に成功した国家はすべて軍事国家である。普通の国家は国民を感染症や有事の生物兵器から守るためにワクチンを研究する。ワクチン開発は生物化学兵器の研究の延長にある。国家が国民を守るのは当然だ。しかし日本のメディアと一部の知識人は、軍事技術の開発という言葉に盲目的な拒否反応を示す。
彼らは理性的に考えれば必要と分かる研究に感情論で反対する。だから政府や企業のワクチン開発が進まない。日本学術協会の学者は一致して軍事技術の研究に執拗に反対する。特に文系の学者の反対の主張は度し難い。
憲法改正でもメディアや文系学者は合理的な判断をしない。事実を基礎にした合理的な理由を示さず、視聴者の感情を煽るためだけの主張をする。国民もそれに煽られ情緒的に反対をする。メディアは、世界と日本の感染者数の比較データを無視して、筆者の「日本のコロナ感染者数はさざ波」は不謹慎とバッシングした。データは筆者の言う通りだった。
なぜメディアは感情的な扇動ばかりするのか、メディアが合理的な思考ができない「数字の読めない文系バカ」が牛耳られているからだ。彼らは、過去の戦争の呪縛から抜け出せないままで、世界情勢や時代の変化を示すデータが理解できない。中国や北朝鮮の軍事的脅威に目をむけず、かたくなに政府の安全保障政策を否定する。過去の呪縛に囚われた「文系バカ」の弊害は大きい。
目次
序章 「さざ波」コロナで大騒ぎした数学オンチ達
第1章 私は「神童」だった
第2章 何の専門性もない財務官僚は「ただのバカ」
第3章 話を盛ったSFのような「AI」論に騙されるな
第4章 仮想通貨が消えても、ブロックチェーン技術は生き残る
第5章 文系のマスコミ記者こそ「本当のバカ」
第6章 ロジカルな理系思考は、臨機応変に対応できる
第7章 小さな格差は忘れて「専門バカ」を目指せ
数字の読めない「文系バカ」が日本をダメにする 高橋洋一著 WAC
神童だった高橋氏
この本は、神童と言われた筆者の逸話が240頁のうち34頁を占めている。ようは自慢話だが面白い。筆者はとんでもない頭脳の持ち主である。大谷選手のように凄い身体能力を持つ人間がいるのだから、凄い頭脳を持つ人間がいても当たり前であるが、人はスポーツと違いその能力が目立たないので認めがらない。東大に合格する人のなかには凡人と頭の構造が全く違う人間がいる。
筆者は、小学生時代、新年度に教科書が配られるとその日のうちに読んでしまう。中学生時代は東大の数学の入試問題を解いていた。高校生時代はZ会の出題問題を作っていた。数学は受験勉強をせずに東大数学科に合格する無双ぶりだった。とうぜん数学者を目指すがふとした事から大蔵官僚になってしまう(理由は本に書いてある)そこで文系バカたちに遭遇するのである。
そんな筆者だから、山尾志桜理氏や前川喜平氏は神童と紹介する雑誌には、山尾氏は毎日8時間の受験勉強をして東大に合格した、司法試験は7回で合格、そんなものは神童でなく秀才にすぎないと怒る。
東大法学部中心の大蔵省へ入った数学科卒
なぜ自慢話にこれほど紙面をさくのか、読み進むとその意味がだんだん分かってくる。大蔵省のキャリアは官僚のなかの官僚と呼ばれ日本の金融行政や政治を支配しているが、殆どが文系の法学部卒である。彼らの権力は非常に大きい。大銀行は東大法学部の同期生を採用して、毎夜接待と情報収集をさせていたほどである。その接待のノーパンシャブシャブは一世を風靡した。
その省に入省した理系の天才数学者という設定が重要である。大蔵省には理系でなければ気づかない問題が山積していたのだ。数学的に考えると成り立たない金融政策や経済政策が多くったのである。筆者は煙たがられながらも問題を解決していくが、途中大蔵官僚があまりにも数学を理解できないのに驚く。市井の人間からみればとてもそんな風には思えないが、大蔵官僚とは専門性を持たない『ただのバカ』」だった。
文系バカが煽る、AI、仮想通貨の正体
AI、仮想通貨とブロックチェーン、ベイシックインカムなど最近のメディアで話題のことも、数学的思考でバッサバッサと切っていく。生命保険、投資、年金、政治問題、すべて文系バカが誤った情報を流している。真っ向唐竹割りである。メディアは、合理的思考よりも商業主義から危機感を煽る。「News diet」のロルフ・ドベリも同じことを言っている。
裁量労働制に対する批判の嘘、衛星放送会社事件は電波法改革派の官僚が処分された、東レや神戸製鋼の不正データの事件は批判を集めたが現実的な危険はない。メディアの不勉強から誤った情報が流されている。間違った情報が流れるのは、文系バカがメディアを支配しているからだ、と手厳しい。
文系バカはメディアと大学にいる
筆者は新聞を読まない。テレビは仕事のために見るが録画をして後からみる。必要な情報は公的な統計や論文など一次データから集める。一次データは事実なので色んな予測の精度が上がる。新聞やテレビのメディアもそれはできるのに正しい情報を確認しない。
メディアのなかでも、ワイドショーは感情を煽るのが目的だから余計たちが悪い。筆者もワイドショーに出演するがそこで提供される情報は知る必要がないものばかりだ。コメンテーターが知ったそうに話す情報に信頼性はない。政府の人事や機密情報は特にそうである。人事情報や機密情報は、重要になればなるほど知る人の数は限られてくる。人数が少ないので漏らせばすぐに誰が犯人か特定される。そうなると破滅なのでテレビ関係者に情報を漏らす訳がない。テレビの専門家やコメンテーターがさも知っているように話すのは話芸に過ぎないのだ。
それに国民は簡単に騙される。国民にもまた文系バカが多い証拠である。そんな国民を事実やデータを無視して煽るメディアの罪は大きい。
太平洋戦争の原因のひとつに大新聞が戦争を煽ったことがある。朝日新聞を筆頭に、米国と日本の国力の差を無視して、鬼畜米英、撃ちてしやまん、とやり放題だった。山本五十六など英米へ留学した軍人は勝ち目がないと反対したが、新聞は山本ら戦争反対派の軍人を攻撃した。山本へのテロも発生した。メディアの中心にいたのは文系バカだった。
今もメディアや文系学者は、世界情勢を合理的に解釈せずに、安全保障政策の議論や憲法改正に反対し、国民を感情的に煽る。反対のための反対だけを繰り返している。国家が危機の際は、感情を排した合理的な議論が必要だが、文系バカが主流のメディアはそれをせず正しい情報も流さない。筆者は、過去と同じ過ちを繰り返すメディアの誤りを具体的に指摘している。「数字を読めない文系バカが日本をダメにする」は政治好きにはたまらない一冊。
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