本 「News Diet」 溢れるニュースは害である

2026年3月10日

ロルフ・ドベリがニュースは害ばかりだと「ニュースダイエット」を書いたのは2021年だった。彼は当時、50人のジャーナリストを前に「ニュースは害である」をテーマに講演をした。彼が話し出すと会場のガーディアンの編集室は静まり返った。ピンの落ちる音が聞こえるくらいに。記者たちは彼に反感を持ったが「ニュースダイエット」は世界的なベストセラーになった。

ニュースの害

それから5年、メディアの状況はずいぶん変わった。人は情報をますますSNSから得るようになり、既存のメディアは若干の軽蔑を含めてオールドメディアと呼ばれている。SNSの発達はオールドメディアの限界を明らかにした。それはニュースは常に商業主義から逃れられないといことだ。多くの人に読んでもらうために真実は二の次にされる。

それはネガティブバイアスの利用に現れる。人はネガティブな情報に普通の情報の2倍反応する。人は生存競争を勝ち抜くためにネガティブな情報に反応する習性を発達させた。メディアはそれを最大に利用する。商業主義は事実より注目度を重要視する。読者の注目を集めるために敢えてネガティブ情報を報道する。記事は刺激的な断片を取り出したものになり真実は遠くに置かれる。

ただネガティブな情報は人に心理的不快感を与える。身体に良くない。更に脳は氾濫する情報に晒され続けると集中力を失う。真実を知ろうとニュースを読んでいるつもりが思考にバイアスをかけられる。ドベリは言う。ニュースを読むのは時間の無駄であり読んでも良いことは一つもない。

ニュースは必要か。ニュースの歴史はわずか350年くらいである。人はそれ以前はニュースの無い世界に住んでいた。だが生活に不自由してはいなかった。現代人は一般に年間2万件のニュースに接するが自分に関係するものは2件くらいしかない。たった2件が生活を良くするだろうか。

問いかけだけではない。ドベリは自らニュースを断った生活を実践する。溢れるニュースに慣れてしまった現代人はニュースがない無い生活を想像するのは難しい。彼も最初は辛く感じたが慣れてくると不自由が無くなった。慣れるとニュースの害がより鮮明になった。ニュースを断つ生活、ニュースダイエットは可能である。

ニュースは理解を妨げ脳を変える

トーマス・ジェファーソンは、180年前にすでにその状況を見抜いていた「何も読まない者は、新聞を読む者よりも教養が高い」事実は思考を妨げる。脳が事実のなかで溺れてしまうのです。

同著

トーマス・ジェファーソンは180年前に既にニュースのバイアスの危険性を指摘していた。人は、ニュースによって確認バイアスや後知恵バイアス、利用可能性バイアスなど色々なバイアスをかけられる。自分で判斷しているつもりがいつの間にかニュースに操られてしまうことになる。真実を理解しようとニュースを読んでいるつもりが、実際は理解を妨げられているのだ。真実はしっかり推敲された論文や長文の記事の中にしかない。

複数のメディアを同時に消費する人ほど、前帯上皮質の脳細胞の数は少なくなる

同著

バイアスだけではない。溢れるニュースは脳に物質的な悪影響を与える。かつては読書家だったのにニュースを熱心に読み続けるうちに長文の記事や本が読めなくなる人が増えている。その原因がニュースにあることを最新の脳科学が明らかにした。膨大な数のニュースに接し続けると、論理的な思考や衝動をコントロールする前帯上皮質の細胞が減少する。その結果、深い思考や長時間の読書をする集中力が無くなる。創造力も弱くなる。単純にいうと馬鹿になる。

ニュースメディアは私たちにはなんらかの付加価値を提供することも、まとまった知識や深みのある分析をもたらすこともできないということを、コロナは示してくれたのだから。

ニュース ダイエット 情報があふれる世界でよりよく生きる方法 ロルフ。ドべリ著) サンマーク出版

ドベリの指摘はコロナのニュースでも証明された。テレビは感染者数や死者数の増加を常に報道して恐怖を煽った。一刻を争う災害とは異なる。感染者数をリアルタイムで放送はする必要があったのか。ネガティブバイアスを利用して注目度上げようとした。その一方で、死者の年齢や既往症など詳細は報道されず全体像を理解できる情報は少なかった。また、ワクチンが開発されると副反応や変異株に有効性がないとの断片的な情報が流された。国民の安全より視聴率が、真実より商業的成功が優先された。

情報を自ら判断できる思考法

第1章「私がニュースを断つまで」から「ニュースの未来」までの34章に、ニュースの害と断つ方法、メリットが簡潔が述べられている。庶民がニュースダイエットを完璧に実践するのは難しいが、ニュースが私達にどのような影響を与えているか、その有害性を知るだけも読む価値がある。ニュースの世界には、環境問題、ウクライナ紛争、ガザ、人種問題、宗教紛争、そしてイラン紛争など、商業主義に基づいて作られる刺激的なニュースが氾濫し思考にバイアスをかけようとしてる。ニュースに操られない思考法を教えてくれる一冊。

Posted by City Tree