サラリーマンのマナー 名刺入れは革の上質な物を持ちなさい

2024年1月17日

会社に入ったとき上司から最初に言われた言葉です。最近は学生でも名刺を持っていますが昔は社会人になってから持つのが普通でした。会社名や部署名の次に自分の名前が書いてあるのを見ると、一人前になったような気がして嬉しかったものです。

ビジネスマンの第一歩、名刺交換のマナー

会社の研修でも名刺交換のマナーが教えられます。

 訪問した方が先に名刺を渡す。

 会社名、部署名 名前を名のる。

 相手の上席から渡す。

 必ず立って、テーブル越しには渡さない。

 戴く時は頂戴致しますと言って受け取る。

 頂いた名刺は名刺入れの上に置く。

 相手が多い場合は机に相手の席順と同じに置く。

 名刺は訪問の目的が終わってからしまう。

簡単そうですが、新入社員の頃は緊張のあまりなかなか上手くいかないのです。新人研修では少しだけ名刺入れについて教えられますが、やはりなれないと難しい。

 名刺は名刺入れに入れること。

 名刺を手帳や定期入れなどから渡さないこと。

当たり前ですが、できていないサラリーマンの多いこと。私はサラリーマンのなかでは名刺交換を多くしてきたほうですが(別に自慢にはなりません)、名刺入れを持ってないサラリーマンに結構出会いました。特に理系の人に多いようです。

私よりもっとたくさんの名刺交換をする人に多く会いましたが、たいてい高い役職の人であり、受け取った名刺は秘書に渡すことも多いので、あまり名刺入れを使いません。

大手企業の賀詞交歓会で、役員が会場の前席に立ちお客の挨拶を受ける風景をご覧になったことはあるでしょう。あの会場では本当にたくさんの名刺が交換されます。賀詞交歓会は、日本独特の商習慣だと思いますが、お客も主催側も満足できるそれなりに合理的な仕組みです。

賀詞交歓会と言いますが実際は名刺交換会です。外国のビジネスマンが日本人と同じように名刺を持って挨拶の列に並んでいるを見ると何か微笑ましく感じます。

名刺の歴史

名刺の歴史は以外と古く世の中に現れたのは古代中国の三国志の時代です。紀元248年に亡くなった武将のお墓から名前を書いた竹簡が発見されました。名刺と呼ばれるのはあの高名な漢の高祖劉邦の逸話からです。劉邦は義理の父親に連絡するために竹簡をその家の壁に刺しました。名前を書いた竹簡を壁に刺したから名刺となりました。

18世紀にヨーロッパにも習慣は広まり、日本へは江戸時代に入りました。高度成長と共に今のような挨拶と同時に名刺交換をする独特のスタイルに発展そうです。日本においては、お互いを知る第一歩なので名刺交換はたいへん重要です。

名刺管理のCMで「もっと早く言ってよ~」というのがありますが、日本における名刺の重要性がよくわかり面白いのです。会社は自社を相手に知ってもうために名刺のデザインを工夫します。写真を入れたり自社のカラーやロゴを強調したり、事業内容がわかるようにします。ただ、名刺は力を入れるのに、名刺入れは社員任せになっています。

良い名刺入れとは

名刺入れは名刺より先に取引先の目に触れるのですから、もう少し気を使っても良いのでしょう。名刺を貰うことが多くなると「これはどうかな」と思うことも増えます。例をあげてみます。

・名刺入れ以外から名刺が出てくる

名刺を手帳や財布からだしてくる人がいます。なぜか二つ折りの使い古した二つ折りの場合が多い。お金以外の物でずいぶん膨らんでいます。それを見ると名刺を大切に思わない人だなと感じます。仕事にも無頓着ではないかと疑ってしまいます。

・名刺入れが貰った名刺でパンパンに膨らんでいる。

このタイプはけっこう多いです。名刺入れがお餅のように膨らんでいます。貰った名刺を持ち歩きたい気持ちはわかるのですが、あまりにも一杯の名刺入れは、名刺の管理だけでなく仕事の管理も苦手な人だと感じます。

・奇抜な色やデザイン、金属の名刺入れ。

この場合の評価は分かれますが、金属製の名刺を金属製の名刺入れから出されたことがありました。営業マンはその商材を販売する人だから仕方ないのですが、紙の名刺と革の名刺入れの組わせがしっくりきます。とくに若い営業マンが薄い金属性の名刺入れをポケットから取り出すと夜の街を連想してしまいます。

これらを考えると、名刺入れは上質な素材で落ち着いたデザインや色あいのものが良さそうです。女性の高級バッグは殆どが革でてきています。上品な質感や長く使えることが愛される理由でしょう。名刺入れも革が良いようです。

名刺が大切なのは、名前が書かれているから

名刺は単なる情報を伝えるカードでありそんな小難しいことを言わなくても良いだろう、それを入れる名刺入れはこれもまた単なる容器にすぎないだろう、ビジネスは実力があれば成功するという意見は当然あります。

それで正しいのですが、名刺にかれている名前が人格の一部であることを忘れてはいけないのです。有名なデール・カーネギーは「人を動かす」に名前を大切にする重要性を書いています。

営業マン、シド・レビィは、ニコデムス・パパドゥーロスという難しい名前のお客を持っていました。たいていの人は難しい名前なのでニックと愛称で呼びます。レビィは正式の名で呼ぶべきと思い繰り返し練習しました。

次に会ったとき、「こんにちは、 ニコデムス・パパドゥーロス さん』とフルネームで挨拶をしました。彼は挨拶されてとても驚き、数分間物が言えない様子でした。彼は涙で頬を濡らしながら『レビィさん、私がこの国にきてからもう15年、今の今まで誰一人ちゃんとした名前で私を呼んでくれた人はいなかったんです』」と言いました。(D・カーネギー 人を動かす 人に好かれる6原則 名前を覚える) 

大切な名前の書かれた名刺は、受け取るときも渡すときも大切にしたいものです。 

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

名刺交換、典型的な二つの失敗

わかっていてもやってしまう名刺交換の失敗があります。

・他人の名刺を渡してしまう。

名刺入れは自分の名刺と戴いた名刺を入れる場所が別れています。自分のところから出せば間違いはないはずです。ところが戴いた名刺を誤って自分のところに入れるとこの失敗は起こります。

あるとき、訪問した会社のライバル会社の名刺を渡してしまい「ふ〜ん、あの会社も担当してるんだ、うちに力が入らないはずですね」と言われました。取り繕いましたが冷や汗一杯です。

・名刺がなかなかとりだせない。2枚を同時に取り出して1枚だけに分けられない。

これもときどきありますが、本当に焦ります。何人かで並んで交換して後がつかえているときなど、慌ててしまい余計に手間取ります。この失敗の怖いところは、年をとるほど増えることです。指の機能が衰えてくるのですね。

この対策は、予め名刺を取り出して間に挟んでおくことです。また、最近は横から滑らして取り出す名刺入れもあります。交通系カードを入れるパスケースのようになっています。コロンブスの卵ですが上手く考えてあります。 

Werner HeiberによるPixabayからの画像

ビジネス小物は、高価でなくても上質の物を持とう

名刺入れは、入社祝いにプレゼントされるので自分で買うことは少ないかもしれませんが、新しい物が欲しくなったりプレゼントをしたいときは、上質な落ち着いたものを選びたいものです。

上品な感じのくびれていない名刺入れの上にさりげなく自分の名刺が置かれると、この営業マンは安定感があるなと好感度が上がります。良い名刺入れを持ったから仕事が上手くいくわけではありませんが、仕事のできる人は上質な(高級ブランドばかりではない)名刺入れを持っています。

神は細部にやどる、少し上質なビジネス小物を持つこだわりと心のゆとりは仕事を上手く進めるのかもしれません。