本 「世界のニュースを日本人は何も知らない」は本当か
「世界のニュースを日本人は何も知らない」がベストセラーとして書店に並んでいた。筆者の谷本真由美氏は海外生活が長く今はロンドンに住んでいる。イギリスのメディアは世界の最新のニュースが溢れている、それに比べて、日本は世界のニュースが驚くほど少ない、日本人は世界のニュースを何も知らないらしい。
日本人が知らないニュースとは
日本人が海外からの評判をとても気にするのはよく知られている。日本人は、ここが海外に比べ劣っていると報道されると喜ぶという奇妙な精神性を持っている。だからメディアはいつもここがダメだ、ガラパゴス(ちょっと古い)だ、もうすぐ滅ぶと書き立てる。反対に日本のここが凄いという意見が出てくると、それはダメな考え方だとすかさず批判する。良い所は良くていいじゃないか、と思うがメディアにすると日本は世界より劣っていないといけないらしい。
コロナ対策をとっても、死者が少なく成功したと言えるが、当時は日本は失敗した、韓国の成功に学べの大合唱だった。高橋洋一氏は死者数を「さざ波」と発言して大バッシングを受け内閣官房参与を辞めるはめになった。数字をみれば正しいのはことは一目瞭然だが無視して情緒的な批判を繰り返した。日本がうまくやるのはいけないのである。
そんな日本人の自虐思想を「世界のニュースを日本人は何も知らない」はくすぐる。
目次
はじめに
序章 日本人はなぜ世界のニュースを知らないのか
第1章 世界の「政治」を日本人は何も知らない
第2章 世界の「常識」を日本人は何も知らない
第3章 世界の「最新情報」を日本人は何も知らない
第4章 世界の「教養」を日本人は何も知らない
第5章 世界の「国民性」を日本人は何もしらない
第6章 世界の重大ニュースを知る方法
おわりに
世界のニュースを日本人は何も知らない 谷本真由美著 ワニブックスPLUS新書
日本人が知らない 問題だらけの欧米
指摘は欧米と日本のメディアの違いから始まる。日本のメディアは国内の事件ばかりを報道する。報道に偏りがあるのはメディアの閉鎖的な体質のせいと支持する国民のせいである。世界のポピュラーな話題、中国による世界のメディア買収、アメリカ映画のソフトパワー、アフリカの政治状況は報道されない。米国の経済格差、トランプ元大統領の人気、ロンドンの非白人層の増加、欧州の移民の実態、マッケンゼーの黒いビジネスもニュースにならない。
筆者はなかなか毒舌である。国連はドブ掃除でもめる町内会、EUは修羅場の町内会みたいなものだ。日本人とメディア国連とEUを大変有難が、現実は町内会みたいなものでいつも揉めるだけで何もしない。日本の治安は国連加盟国中トップクラスの良さを誇り、社会福祉が充実していることも報道されない。
欧州の移民難民問題、イスラムの問題もニュースから外される。ニカブ着用と表現の自由の対立、イギリスであったイスラム教徒による小学校の乗取りも知らされない。日本メディアはイスラムと移民と中国の負の話題の報道は避ける。
欧州の富裕層は社会が乱れても豊かで有り続ける理由、黄色いベスト運動の真相、老いに対する考え方の違い、富裕層が多重国籍を持つこと、アメリカ人の信仰心の強さ、イギリス人の借金好き、ドイツ人のスケベさも報道されない。筆者の言う通りこれらのニュースはあまり報道されない。
世界のニュースを日本人は何も知らない (ワニブックスPLUS新書)真実はネットに埋もれている
だが、筆者が指摘する記事はネットを検索すればたいてい見つかる。ドイツの難民問題を例にとれば、ドイツ政府は移民や難民について否定的な報道することを禁止しているが、婦女暴行や強盗の事件は記事になる。するとその記事を読みSNSやブログで発信する人が現れる。
SNSは経済や軍事の専門家、海外在住などあらゆる分野の人が頻繁に情報を発信する世界であり、フェイクニュースや陰謀論が多くある玉石混交の世界だが真実が必ず埋まっている。国連や関連機関の非効率性や、発展途上国出身の職員が自分の縁故者を採用して職員を増やすために財政がいつも逼迫している、中国人が国際機関のトップを増やそうすることは良く知られている。
国連人権委員会はウィグル問題は批判せずに、日本人弁護士が流すフェイクニュースを信じて日本の皇室やLGBtは非難する。欧州が階級社会であること、庶民は富裕層のポリコレにうんざりしていること、人道主義から移民受け入れを支持していたが、イスラム移民による治安の悪化や教義の押付けに嫌気がさして排斥に傾いているのも知られている。だから「日本人が知らないニュース」は「日本人が世界のニュースを知らない」は必ずしも正しいとは言えない。
受動的に情報を得る人たちが知らないニュース
「日本人が知らないニュース」は実際は「日本の新聞やテレビが報道しないニュース」であり、日本人が知らないのでなく新聞やテレビしか見ない日本人が知らないのである。この本がベストセラーになることがそれを証明している。
メディアは商業主義の原則に基づいて行動するから、読者や視聴者の注目を集めるのを最優先にする、そのために色んなバイアスを利用する。人はネガティブな情報にそうでない情報の2倍反応する、それがネガティブバイアスだが頻繁に使われる。国連や国際機関に対する異常な信頼、人道主義の盲目的称賛、中韓への過剰な忖度、移民難民の負の問題、国際安全保障の無視、憲法9条の盲信などニュースに多くのバイアスが掛かっている。
世界の情勢は日々変化している。昔のバイアスが掛かったままでは世界からおいて行かれてしまう。だが日本のメディアに変わろうとする気は無い。新聞社やテレビ局は法律に守られて新規参入がない。スポンサー企業とテレビ局と間に広告代理店が入るため、視聴者の声がスポンサーに届き難い。テレビ局は好きなように報道する。競争原理が働かないから変わる必要がない。このままではゆでガエルになる。
ニュースは能動的に取る
「ささ波」発言の高橋洋一氏は、著書「文系バカが日本をダメにする」で情報は一次データから取れという。「News Diet 」のロルフ・ドべリ氏は、商業主義により作られるニュースから真実は得られないと述べている。
特にメディアは信用できない、事実を知りたいと思うなら、情報を海外メディアやネットから得るしかない。受動的から能動的に情報を集める必要が出てくる。ネット上には膨大な情報が氾濫している、そのなかからフェイクと真実を見分けないといけない。フェイクを見抜く力のもとは常識にある。普通に考えればおかしい、それは無理という感覚が大切だ。
リベラルなメディアは欧州に移民排斥の意見は少数と主張する。現実は移民によるトラブルは増加の一途だ。SNSに上がる事件のニュースは増え続けている。SNS上の意見の増加は移民を嫌う人の増加と連動している。トラブルが増えれば嫌いになるのが普通の感覚だ。人道主義的な人でも自分の近くで事件が続けば嫌になる。事件が多発する状況で多くの人が移民を歓迎しているというのは無理がある。排斥の意見が少数とするニュースは現実を示していない。
メディアがネトウヨの陰謀論だフェイクだといっても、事実の数が増えれば真実は漏れてくる。中国のような強烈な情報統制の下でも少しは漏れる。流行りのLGBtも同じである。男が自分は女だと主張して女性スポーツに参加して優勝したり、性自認だけの男が女性用のシャワー室に入る、それは普通の感覚ではおかしい。髭を生やしたまま女装をして女性美の基準を変えようとするのも無理だ。インスタグラムには女性を強調する動画が溢れている。それがトランス女性への女性の回答である。行き過ぎた主張や事実に反する主張はどこかで論理が破綻する。
アジア情勢は今後ますます悪くなっていくが、日本のメディアは今のバイアスを捨てないだろう。「世界のニュースを日本人は何も知らない」が読まれるのは日本にとって良いことだ。テレビしか見ないという日本人に読んで欲しい一冊。
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