本 「世界のニュースを日本人は何も知らない」は本当か

2024年2月19日

「世界のニュースを日本人は何も知らない」がベストセラーとして書店に並んでいた。筆者の谷本真由美氏は海外生活が長く今はロンドンに住んでいる。イギリスは世界の最新のニュースが溢れている、それに比べ、日本は驚くほど世界のニュースが少ないらしい。そのため日本人は「世界のニュースを何も知らない」のである。

世界のニュースを日本人は何も知らない3 – 大変革期にやりたい放題の海外事情 – (ワニブックスPLUS新書)

日本人が知らないニュースとは

日本人が評判をたいへんに気にするのはよく知られている。特に海外からの評価が気になる。海外に比べ劣っていると言われると大変喜ぶ、という奇妙な精神性を持っている。だから日本のメディアは、いつもここがダメだ、ガラパゴス(ちょっと古い)だ、もうすぐ滅ぶと書き立てる。

メディアは、日本のここが凄いとの意見が出てくると、それはダメな考え方だとすかさず批判する。良い所は良くていいじゃないかと思うが日本は世界より駄目でないといけないらしい。

コロナ対策でも、日本は死者を少なく抑えて成功していると言えるが、メディアは日本は失敗した、韓国の成功に学べの大合唱である。高橋洋一氏は死者数を「さざ波」と発言して大バッシングを受け、数字をみれば正しいのは一目瞭然だが、情緒的な批判により内閣官房参与を辞めるはめになった。

そんな日本人の自虐思想を「世界のニュースを日本人は何も知らない」はくすぐるのである。

目次

はじめに

序章  日本人はなぜ世界のニュースを知らないのか

第1章 世界の「政治」を日本人は何も知らない

第2章 世界の「常識」を日本人は何も知らない

第3章 世界の「最新情報」を日本人は何も知らない

第4章 世界の「教養」を日本人は何も知らない

第5章 世界の「国民性」を日本人は何もしらない

第6章 世界の重大ニュースを知る方法

おわりに

世界のニュースを日本人は何も知らない 谷本真由美著 ワニブックスPLUS新書

日本人が知らない 問題だらけの欧米

指摘は欧米と日本のメディアの違いから始まる。日本のメディアは、国内の事件ばかりを報道する。報道に偏りがあるのはメディアの閉鎖的な体質のせいであり支持する国民のせいだ。そのため、世界でポピュラーな話題、中国による世界のメディア買収、アメリカ映画のソフトパワー、アフリカの政治状況は報道されない。米国の経済格差、トランプ元大統領の人気、ロンドンの非白人層の増加、欧州の移民の実態、マッケンゼーの黒いビジネスもニュースにならない。

筆者はなかなか毒舌である。国連はドブ掃除でもめる町内会、EUは修羅場の町内会みたいなものと手厳しい。日本人とメディアは、国連とEUを大変有難がるが現実は町内会みたいなものである。また日本は国連加盟国中トップクラスの治安を誇り、社会福祉が充実した国であることも報道されない。

欧州の移民難民問題、イスラムの問題もニュースから外される。ニカブ着用と表現の自由の対立、イギリスであったイスラム教徒による小学校の乗取りも知らされない。日本メディアはイスラムと移民と中国の負の話題の報道は避ける。

欧州の富裕層は社会が乱れても豊かで有り続けるのは何故か、黄色いベスト運動の真相、老いに対する考え方の違い、富裕層は多重国籍を持つ、アメリカ人の信仰心の強さ、イギリス人の借金好き、ドイツ人のスケベさも報道されない。筆者の言う通り、日本のメディアは海外のニュースを報道していない。

ただ、これらの「日本人が知らないニュース」はネット上に流れている。そのことを考えれば「日本人が世界のニュースを知らない」は必ずしも正しいとは言えないのではないか。

世界のニュースを日本人は何も知らない (ワニブックスPLUS新書)

真実はネットに埋もれている

ネットを検索すれば指摘される記事はたいてい見つかる。例えば、ドイツの地方の難民問題がある。ドイツ政府は、移民や難民に関する否定的な報道を禁止している。それでも地方紙は婦女暴行や強盗の事件は記事にせざるを得ない。すると記事を読みSNSやブログで発信する人が現れる。

ネット世界では、経済や軍事の専門家、海外在住などあらゆる分野の人が頻繁に情報を発信している。情報のなかにはフェイクニュースや陰謀論も多くあり、まさに玉石混交の世界だが真実は埋まっている。国連や関連機関が非効率とか発展途上国の役人が縁故で職員をするため財政が逼迫する、中国人がトップの国際機関が多いは良く知られた事実である。

国連人権委員会はウィグル問題は批判しないが日本ばかりを非難する。国連でフェイクニュースを流す日本人弁護士がいる。欧州が階級社会であること、庶民は富裕層のポリコレにうんざりしていること、人道主義から移民受け入れを支持していた人たちが、イスラム移民による治安の悪化や教義の押付けに嫌気がさして、排斥に傾いているのもネットでは知られている。

受動的に情報を得る人たちが知らないニュース

テレビや新聞といった既存メディアとネットを比較すれば、筆者が指摘する「日本人が知らないニュース」は「日本の新聞やテレビで報道されないニュース」だとわかる。日本人が知らないではなく、日本の新聞やテレビが報道しないニュースが正しいタイトルだろう。

この本がベストセラーになるのは、多くの人がテレビや新聞という商業主義のメディアから情報を受動的に受け取っていることを示している。メディアには独特のバイアスがかかっている。バイアスは、国連や国際機関に対する異常な信頼、人道主義の盲目的称賛、中韓への過剰な忖度、移民難民の負の問題、国際安全保障の無視、憲法9条の盲信になって現れる。

世界の情勢は日々変化している。昔のバイアスをかけたままの報道では世界からおいて行かれてしまうが、日本のメディアに変わろうとする気は無いようだ。現状のままではゆでガエルになるだろう。それは新聞社やテレビ局は法律に守られて新規参入がない。新聞は家に配達される。テレビ局は広告代理店がスポンサー企業の間に入るので視聴者の声が企業に届かない。競争原理が働かないから変わる必要がない。

「ささ波」発言の高橋洋一氏は、著書「文系バカが日本をダメにする」に情報は一次データから取れと書いている。「News Diet 」の作家ロルフ・ドべリ氏は、商業主義により作られるニュースから真実は得られないと述べている。だが日本では商業主義のメディアから情報を得る人がまだまだ多いのである。

ニュースは能動的に取る

自らゆでガエルを目指しているメディアは信用できない、事実を知りたい、と思うなら海外メディアやネットから情報を得るしかない。受動から能動に変わらないといけないのである。ネットから正しい情報を得ようとすれば、氾濫する膨大な情報からフェイクと真実を見分けないといけない。その基本は自分の常識にある。それは普通に考えればおかしい、それは無理という感覚である。

例えば、リベラルなメディアは欧州では移民排斥の意見は少数と記事にする。だが現実は移民のトラブルが増えている。増えればそれに関するニュースも増える。SNSの発信も増える。普通の人はトラブルが増えれば移民は嫌だと思う。人道主義的な人でも自分の近くで事件が続けば嫌いになる。それが普通の人の感情である。

移民の事件のニュースやSNSの増加は、移民を嫌悪する人の増加を示している。それなのに多くの人が移民を歓迎しているというには無理がある。排斥の意見が少数とするニュースは現実を示していないのだ。

メディアがネトウヨの陰謀論だフェイクだといっても、事実の数が増えれば真実は漏れてくる。中国のような強烈な情報統制の下でも少しは漏れる。流行りのLGBtやSDGSも同じである。男が自分は女と主張して女性のスポーツに参加して優勝したり、裸で女性用のシャワー室に入る、それは普通の感覚ではおかしい。髭を生やしたまま女装をして女性美の基準を変えようとするのも無理がある。

インスタグラムには女性を強調する動画が溢れている。それがトランス女性への女性の回答である。行き過ぎた主張や事実に反する主張はどこかで論理が破綻する。

今後アジアの国際情勢はますます悪くなっていく。だが日本のメディアはバイアスを捨てないだろう。その日本で「世界のニュースを日本人は何も知らない」のような本が読まれるのは良いことだ。テレビしか見ない日本人に、ぴったりの一冊。

Posted by 街の樹