十三に棲む日 メディアという資格が要らない職業
今年の夏も暑そうだ。梅雨がくると子供の頃の夏休みを思い出す。朝から強い日差しとセミの声が降り注いだ。蝉時雨とはうまくいったものだ、たしかに降り注ぐ。その頃は毎日したいことでいっぱいだった、ラジオ体操、カブト虫取り、川遊び、昼寝に宿題、夜になるとすぐに眠ってしまう。ズボンを濡らす朝露、青々とした水田を渡る風、真っ白な入道雲、きらめく川の流れ、母や家族の笑顔、世界は調和し何の憂いもなかった。
子供の頃を思い出す度に、自分は小学生の頃から成長したのだろうか、ひょっとしたら退化したのではないだろうか、疑問は積乱雲のように湧きあがる。
人生に必要な知恵は全て幼稚園の砂場で学んだ
米国のエッセイスト、ロバート・フルガム氏は「人生に必要な知恵は全て幼稚園の砂場で学んだ」という本を書いた。人生に必要なことは全て幼稚園で習っているらしい。そうであれば、田舎の小さな保育園の砂場で遊んだ私は、そのときから忘れるばかりの人生を送ったことになる。
いやそんなことは無いはずだ。大学を卒業して就職し子供を育てた。少ないけれど本も読む。税金を払い酒場へ行く、カラオケを歌い大人の遊び場へも行く。けれどそれは成長なのだろうか。
フルガム氏の妻は医者で、7年に一度、医師免許の更新試験を受けなければならない。彼は妻が試験勉強中の静まりかえった家で、医者だけでなく国民にも資格がいるのではないかと考えた。国民としてふさわしい知識や見識を持つ必要がある。そのために試驗がいると思うのである。
彼は国民の資格は定期的に試験で更新されるべきである。試験科目は、読み書きや歴史は必須、数学は加減乗除は最低必要、その他に何が必要かと考えているうちに自分の知らないことの多さに驚くのだった。
私など、そんな国民資格試験があったら簡単に落第するかもしれないと思うが、最近のSNSに上がる動画や色んな犯罪を見るとフルガム氏に賛成である。
資格や免許が必要な職業
人をいじめたり、ぶったり、規則を破ったりしない。嘘をついてはいけません、お年寄りに優しくしましょう、横断歩道では手を挙げましょう、という先生の言葉を園児は素直に守るけれど大人は守れない。
だから法律や規則がたくさん必要になる。道路は右側を走りたいと思っても右車線を走ってはいけない、赤が嫌いだからといって赤信号を突っ切ったりしてはいけない、他人の物を盗んだり嘘や詐欺はいけません。法律で決めて罰しないと守らない。
仕事も同じである、人に怪我をさせてはいけないから色んな規則や資格がある。河豚の調理は免許が必要だ。河豚にあたると雲の上にいるように気持ち良いらしいが、帰ってこられるかわからないので遠慮したい。
官僚、警察、消防、医者、弁護士、公認会計士、自衛隊、薬剤師、多くの仕事に試験がある。ガソリンを売ろうとすれば危険物の資格がいる、クレーンで物を吊るには玉掛け試驗がいる。居酒屋は調理師免許に保健所の許可、火を使うなら防火管理者、あれやこれや免許と許認可がいる。すべて社会の安全のためである。
マスメディアという資格の要らない世界
ところが、社会に大きな影響を与えるのに資格や免許がいらない職業がある。大学教授、政治家、マスメディアだ。大学教授は誰でもなれるが試験があるので規制があるとも言える。政治家は選挙がある。
マスメディアは資格や試験が無いらしい。テレビのコメンテーターにコメンテーター資格試驗は無いようだ。ディレクターや新聞記者に資格試験があるとも聞かない。公的権力に縛られてはいけないが、メディア関係者にもある程度の常識は必要ではないか。
間違った根拠で某国女性が強制連行されたと書いて国際問題を起こしている記者がいる。珊瑚礁に落書きを自作するカメラマンがいる。カルト集団に弁護士家族の情報を渡て一家を死に至らしめたテレビ会社がある。無実の人を毒ガス犯にしたキャスターがいる。
オリンピックを開催すればコロナの死者が増える。コロナで街からトイレットペーパーが無くなると脅す。他人の浮気を責めるながらマスコミ関係の不祥事は責めない、コロナ対策中に営業した居酒屋を執拗に責めるが、そのテレビ会社の社員は酔っ払って2階から落ちた、どこで飲んでいたのやら。侵略された国に降伏しろという元大阪府知事だったコメンテーターがいる。
幼稚園のお約束、嘘はいけません、落書きはいけません、悪口はいけません、いじめはいけません、お約束は守りましょう、をメディアの人たちは忘れていないか。新聞やテレビは個人や社会に大きな影響を与える、それなのにメディアに資格試験が無いのはどうしたものか。
フルガム氏が、国民資格試験を考えたように、メディアにも資格試験がいるのではないか。試験科目は何が良いだろう。日本語の読書きと歴史は必須、数学は加減乗除・・・窓の下を小さい子供たちが歩いていく、「嘘をついたらいけませんと園長先生が言ってたよ」これだけで十分だ。
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