サラリーマンのマナー 持家か賃貸か 買いましょう。

2023年7月26日

サラリーマンにとって家は最大の買い物である。サラリーマンでなくても、余程のお金持ちでなければ、長い住宅ローンを組んで買う大きくて高い買い物である。愛人にマンションを買ってやる人がいるそうだが夢のまた夢。そのような買い物だから、買うべきか、それとも賃貸にすべきか、ハムレットでなくても大きな悩みになる。どちららが得か損か、の議論は結論が出ないようだ。

家は最大の買い物 持ち家か賃貸か?

持ち家と賃貸のどちらが得かのテクニカルな分析、生涯に必要となる経費、修繕などの維持費、資産価値、は住宅会社や銀行、税理士やフィナンシャルプランナーが詳しく説明してくれてネットにも多くの記事がある。説明は殆ど同じだが、メリット・デメリットの対比であまり言われないことがある。

サラリーマンが家を買おうと思うのは、たいてい家族ができたときである。子供を芝生の庭で遊ばせたり、家族でバーベキューをしたり、マンションでは春はお雛さま、冬にはクリスマスツリーとパーティ、暖炉の前には子犬とあなた、子供が大きくなればリビングで勉強させようか。そんな光景が購買の動機になる。

引越しは家族の歴史を消してしまう

Country roads, take me home 
To the place I belong 
West Virginia, Mountain Mamma 
Take me home, country road
 

ジョン・デンバー

日本人には少ないが、いろんな所に住みたいので賃貸が良いと思う人や、定年になったら実家に帰るから賃貸で良い人がいる。私は実家があるので賃貸を選択した。妻も京都市内に実家があるので、いつかは京都に帰りたいと考えていた。

家を買わなかったのは転勤族だったのも理由にある。転勤を繰り返しいろんな街に住めて楽しかったが、どこに住むかを決めきれなかった。今は大阪の北の街に住んでいる。そろそろ引っ越しの時期なのだが、街を離れるのが億劫になってきた。

家を買っておけば良かったと後悔ではないけれど、その想いはつのる。家は住むための器だけでなく、家族の歴史が積み重なった場所だった。子供にとって故郷なのを忘れていた。ジョン・デンバーが歌う、To the place I belongだった。引っ越したら思い出も故郷も無くなる思うと億劫になる。

家は、子供の故郷

話は変わるが、「家栽の人」という漫画がある。桑田判事が主人公の家庭裁判所の物語だ。桑田判事は家の財産分与の裁判で、分割相続する3人兄弟に「気持ちよく帰れる家は冬の日のピラカンサみたいなものです」と言って家を残すことを提案をする。家の庭に見事なピラカンサがあった。兄弟は一笑に付す。

翌年の冬、裁判所の忘年会、同僚たちが桑田判事を待つ居酒屋へ、裁判の3人が偶然現れる。彼らの一人は「更地になった家の跡地を見たら、故郷を無くすのって簡単だなと思いました」と言う。私の実家にもピラカンサがあり、その実を狙ったヒヨドリがガラス窓に衝突、時々失神するがこれは余談。

持ち家か賃貸か、老いの感情を考慮する

京都へ帰ると決めていたのに、今になってなぜ嫌になったのだろうか。答えは簡単で歳を取ったからだ。持ち家か賃貸かを選ぶ年代は、選択する人も意見をいう人(コンサルタントのような人)も現役である。自分は気づかないが気力や体力が充実している。

年をとってからの引っ越しの大変さがわからない。コンサルタントの作るメリット・デメリットの比較表に、老後に引っ越しに対する精神的や体力的な衰えは入らない。

引越しなんか業者に頼めば簡単だろう、億劫にならないと言われるかもしれないが、年を取ると断捨離や引越しはとても辛いのだ。長年暮らした家や街から離れたくない気持ちが強くなっている。気持ちの変化は(悲しいことだが)老いがもたらす。持ち家と賃貸のメリット・デメリット表に、老いの気持ちをいれてほしいと思う。

買えるなら、家は買うべきである

結論は家が買えるなら家を買うべきである。持ち家は死ぬまで引っ越したり片付けの心配がない(ゴミ屋敷はダメだが)賃貸はいつかは引っ越さねばならないと常に考える、この気持ちの差は大きい。選択は自由だが家族にとって冬の日のピラカンサようになる家があれば・・・買うべきである。