本 「とにかく死なないためのしょぼい投資の話」目から鱗の投資術

2023年8月14日

世の中には生まれながらの大金持ちもいるが、日々の生活に追われる人がほとんどだろう。そのなかには金持ちを目指す人もいれば、好きなことがしたいと思う人がいる、いろいろな事情で働けない人もいる。どのような環境に置かれても最低限の暮らしをするお金は必要だ。そのお金を投資で儲けられないか、と考えたとき読めば良いのがこの本だ。

お金が欲しいとき

サラリーマンの収入は安定しているが短期間に増やせない。副業という手はあるが、多くの会社は副業を禁止している(コロナ不況で解禁する企業は増えている) しかし投資を禁止している会社は殆どない。副業と投資は同じ金儲けなのに不思議なことだが、自分が働くかお金に働かすのかの差かもしれない。

働けない、起業もできない、投資しようにも元手がない・・・ それでも生きていくための「働く以外の方法」

とにかく死なないためのしょぼい投資の話 えらいてんちょう(矢内東紀)著 河出書房新社

実際に株式や信託投資をやっている人は多くいる。ただ株式投資はリスクが伴う。今から投資を始めたいと思う人は「とにかく死なないためのしょぼい投資の話」を読むべきだろう。証券会社の投資情報と異なった有用な視点がある。

投資のリテラシー

筆者「えらいてんちょう」は、就職をする前からサラリーマンは無理と考え起業家になった人である。色んなことをやりながら妻と子供と暮らす金を稼いでいる。彼は不安定な将来に備えて投資はすべきだが、死なない程度の投資でないといけない、死なないためにお金の価値や投資の本質を知らなくてはいけないと言う。

筆者は若者にずいぶん人気があるようだ。社会にバグがあると経済が混乱する、心理的債権は物理的な債権より重要である、などの現代風の表現が受けるのだろう。軽すぎるという印象はあるが、お金や投資の考え方は王道を行っている。

簡単に儲かるノウハウは書いていない、そもそも世の中はそんなものはない、とも書いている。筆者が伝えたいのは投資のテクニックでなく投資の心構えなのだ。投資の基礎知識の後で、危ない投資と死ぬ確率を減らす方法が説明される。

平時は金の総量が増えないので、投資は一人勝ちする者とその他大勢の負け組の状態になるので慎重にしなくてはならない。2000万円問題のように遠い未来の資産を計算するのは、未来の不確定さを考えれば意味がない、と筆者らしい言葉で自論を語る。

投資は株やFXだけでは無い。人へ投資も大切な投資なのである。そのリターンは投資した人の助けである。「しょぼい投資」のいちばん重要な投資対象は人なのである。助け合って生活の糧を得るための投資が重要なのだ。

筆者は、投資は株や投資信託、FXや暗号資産などの金融商品にするものとの思い込みを批判する。人への投資こそが投資なのだ。それは古くて新しい考え方である。昔は人への投資は当たり前だった。出世払いで良いよという言葉がそれを示している。筆者はそれを若者に伝えようとする。

しょぼい投資を考えてみよう

筆者は、投資は自分が望む行き方のためにすべきだと考えている。行き方を探すのははFIREと共通するが、人への投資や必要以上の金を無理して儲けない、楽をしながら資産形成をする前提が違っている。投資を職業とする以外の人が、投資で儲けようとする理由の多くは、子供と家、老後と親の介護にひつようなお金ではないか。

二人の子供を大学へ進学させ、親の面倒をみないといけないとなると、一部上場会社で働いていて大変な重荷だろう。給料だけでがむしゃらに乗り切っても、学資ローンが残ったりその後の生活を切り詰めたりと大変になる。

子供が成長するまでに、給料以外の収入があれば余裕を持てる。お金のいる日に備えてしょぼい投資をするのは良いことだが、原則の生活費を確保してそれ以外の収入を投資をする気持ちを忘れてはいけない。生活費まで投資するような投資はやめて「とにかく死なない投資」をしなくてはいけない。

何事も無理をしたくない、人と緩やかに繋がりたい、でも将来の備えは欲しいと思う人にピッタリの一冊。

お金には使う旬がある

お金持ちでも早く亡くなる人がいる。仕事ばかりで亡くなる人もいる。豪勢な暮らしや世界旅行をする資産は十分にあったのに仕事ばかりしていた。仕事がいちばん楽しい、お金の心配をしないでよいのは羨ましい、子供に財産を残したのは素晴らしいという意見も当然あるだろう。

しかし金を貯める目的は何だろうとの疑問は浮かぶ。「DIE WITH ZERO」でビル・パーキンソンは言う「アリはいつ楽しむのだろう」その通りで「なんぼ貯めても使わんと死んだらおしまいや」である。金は欲しい、でも豊かな人生も送りたい、そのヒントがこの本にある。