日本人の考え方 「おかげさま」と「ぼちぼち」

2026年2月23日

「お商売の調子、どうでっか」(お商売は上手くいってますか)

「おかげさんで、ぼちぼちですわ」(おかげさまで、まあまあ良いですね)

大阪は昔から商都と言われる商売の都市です。大阪の商人は、良く言えば商売上手、悪くいえばえげつない商売で大阪商人と呼ばれます。その二人の会話です。この会話の内容がわかりますか。「ぼちぼち」とはどういうこと。「おおかげさん」ってなんのことでしょう。

大阪商人の会話

こんなのもあります。

「ぼちぼち出発の時間でっせ 」(そろそろ出発の時間です)

「そうでっか、ほな、ぼちぼち行きまひょか」(そうですか。それでは、のんびりと出発しましょうか)

「ぼちぼち」は関西でよく使われる言葉です。意味は大きく分けて二つです。一つは「ぼちぼち始めまひょか」の「ぼちぼち」です。これは「そろそろ」の意味です。「ぼちぼち始めまひょ」は「そろそろ始めましょう」です。ただ「のんびり」の意味もあるからややこしい。「のんびり行きましょうか」も「ぼちぼち、行まひょか」になります。どちらになるかは、使われる状況とアクセント次第です。

「子供さん、どうしたはります」(あなたの子供はお元気ですか)

「おかげさんでぼちぼちやってますわ」(おかげさんで、ぼちぼちで元気にしています)

二つ目はこんな使い方です。この場合「まぁまぁ良い」の意味になりますが、とても曖昧な返事で大阪の人以外にはわかり難いものです。この「ぼちぼち」に語源は無く江戸時代の中期からなんとなく使われ出したそうです

「ぼちぼちの意味は、音の響きで簡単に分かりますな」(ぼちぼちの意味は、発音で簡単に分かります)

「分かるのは関西人だけです」(分かるのは関西人だけです)

「えらいすみまへん」(どうもすみません)

謎の言葉 ぼちぼち

「お商売のほう、どうでっか」(お商売は上手く行っていますか)

「ぼちぼちですな」(ぼちぼちです)

さてこちらの「ぼちぼち」は少し難しいですね。大阪人は、商売が上手くいっていても、上手くいっていなくてときも「ぼちぼち」を使います。答える立場の人は事実を曖昧にします。聞く方は相手の顔色や表情でどちらの意味かを判断します。ここで大切なのは相手が返事を曖昧にしておきたいと思っていることです。

性格に答えるのは嫌だけど、言いたくないと拒否をすると相手が不愉快になるかもしれない。それは避けたい。そんなとき「ぼちぼち」を使います。だからそれを言われた人は深く追求してはいけないのです。

「ぼちぼち言うても、どれくらいでっか」(ぼちぼちと言っても、どれくらい上手く行っているのですか)とやってはいけないのです。

「なんで、あんたにそれを言わんとあかんのや」(どうして、あなたにそれを言わないといけないのか)と気まずくなることがあるので要注意です。

「それは良ろしな(それは良いですね)」くらいの返答をして次の話題に移るのが良いのです。挨拶の言葉と考えても良いかもしれません。「調子はどうでっか」「ぼちぼちでんな」英語の「How do you do」「I’m fine」に近いかもしれません。

おかげさまの意味は

「おかげさま」の説明に「ぼちぼち」いきましょう。この言葉はビジネスの場面によく登場する慣用句になっています。営業マンが顧客を訪問したときの会話です。

「この度はありがとうございました。おかげさまでプロジェクトは順調に進んでおります」

「おかげさまで、契約がとれました」というように使います。

この場合「おかげ」は「あなたの協力や支援」のことです。ビジネスの使われる場合は「おかげ」の対象がはっきりしていることが多いのですが、そうでないこともあります。仕事の関係のない人から「仕事の調子はどうですか」と聞かれたときも「おかげさまで上手く言ってます」ということがあります。日常会話では対象がはっきりしない事が更に多くなります。

「子供さん、どうしたはるの」(あなたの子供は、元気にしていますか)

「おかげさんで元気やってますわ」(おかげさんで、元気にしています)

「体調はどうや」(体調はどうですか)

「おかげさんで、調子ええわ」(おかげさんで、調子が良いです)

こういうときは質問した人に感謝しているのではありません。それでは誰に感謝しているのでしょうか。それは仏様なのです。仏様の支援(加護)で子供は元気に暮している。仏様の支援(加護)で自分は元気でいられるとの感謝です。

人は仏様の智慧と慈悲の陰で暮らしている

日本人は、この「おかげさま」と言っても、特に若い人は仏教を意識しませんが仏教に由来します。「仏様のご加護」と言わないで「おかげ」というのは、世界は仏様の知恵と慈悲に覆われているという教えから来ています。「おかげさま」を漢字で書くと「お蔭様」になります。仏様の御心は世界を大木のように覆っています。人はその陰の下で幸せに暮らしています。それに感謝するのが「おかげさまで」なんです。時間が経つうちに感謝を表す慣用句になりました。

人は一人で生きていけません。家族や社会、自然、環境、あらゆるものに助けられて生きています。日本人は信仰を持たないと言われますが、こんなところに信仰が生きています。SNSで不満をいう人が増えましたが、日本人は色んなものに感謝して生きてきたのです。それを象徴するのが「おかげさま」という言葉です。

もしあなたが「ぼちぼち」を使ったら大阪人は喜ぶでしょう

今日も大阪の街ではこんな会話が交わされているのでしょう。

「まいど」(こんにちは)

「どうでっか、儲かりまっか」(商売の調子は如何ですか。利益は上がっていますか)

「おかげさんで、ぼちぼちやってますわ」(仏様のご加護で、のんびりやってます)

「そんな、焦らんでもよろしやん。ぼちぼちいきましょや」(焦らなくて良いでしょう。ゆっくり行きましょう)

「How about you」

「ぼちぼちでんな」

大阪人は外国の人が「ぼちぼち」を使うと喜びます。ただ東京ではこの微妙な感じは通じないかもしれません。