本 「しょぼい起業で生きていく」ミニマム起業の方法
「しょぼい投資の話」が面白かったので、前作「しょぼい起業で生きていく」を買ってしまった。期待にたがわない面白しろさだった。サラリーマン生活が嫌だから起業したい、と思う人は多いだろうが実際に実行する人は少ない。その起業を脱力系ながら実行してしまう筆者は凄い。
起業の目的はストレスからの解放
一般的な起業して成功するイメージは、ホリエモン氏やZOZOの前澤氏である。事業を拡大し収入を増やし六本木ヒルズに住み、アイドルを呼んでドンちゃん騒ぎをして宇宙旅行をする。あのような事をできたらどんなに楽しいたろうか、まさに雲上人である。起業は、雲上人を目指すものと思っていたが、この本を読むとどうやらそれだけではないらしい。
会社においてやることを「ワーク」会社以外の人生を「ライフ」という関係に置くと、「ワーク」は一定の(給料)をもらう代わりに、楽しいことも嫌なこともセットで強制されるのに対して、「生活・資産の労働力化」や「正しいやりがい搾取」はどちらかと言うと、「ストレス」と「ノンストレス」の関係に近いです。
しょぼい起業で生きていく えらいてんちょう(著) イースト・プレス
筆者「えらいてんちょう」が提案する「しょぼい起業」は事業拡大や社員増を目指さない、現在の収入から自分(と家族)が生活していける金額を確保して残りを使って起業する。IT企業を経営して六本木ヒルズで暮らすのは華やかだが、ストレスも半端ないだろう。筆者の起業はノンストレスに近い。そもそも起業の前提が「嫌なことはしない」であり、ストレスから解放されるのを目的にしている。
しょぼい起業の資産は人脈
しょぼいと言うが経営の三原則、資本、土地、労働はしっかり押さえている。大層な事業計画はつくらず小規模の有利さを活かして素早く会社を立ち上げる。資本はミニマムにして、必要な費用や備品は個人のネットワークで集める。土地は家と会社を兼用にして安くあげる。
社員(働き手)は仕事に共感する知人や友人である。みんなのやりがいを「正しく搾取」する。「人脈という生活資本」を労働力化する。商品は既に持っている物(資産)を利用する「手持ち資産」の資本化である。最小限の費用で起業するから「しょぼい起業」なのだ。
「しょぼい投資」は「人つきあい」を「感情株」と名づけて投資の対象にする。配当は、店や近所から返ってくる協力や手助けである。感情株に象徴されるように、人脈ネットワーク(自然に繋がっていくもの)が重要な役割を担う。
「えもいてんちょうのしょぼい喫茶店の開業」の章は、会社へ行きたくない若者たちが、SNSや偶然の出会いによって集まり喫茶店を開業する。すべてが人脈から始まる。集まった若者たちのギラギラしない働き方が印象的である。サラリーマンになりたくないなぁとか、もうサラリーマンはやってられないという人におおいに参考になる。
起業家のネットワークは、サラリーマンとは大違い
えらいてんちょうや対談に登場する起業家がサラリーマンが厳しいと思っているのが可笑しい。満員電車での通勤や行動を制限される組織に耐えられないそうだ。しかしサラリーマンなら分かるがそんなのはたいしたことではない。すぐに慣れる。それよりも筆者たちが自然につくる人脈ネットワークを構築するのが余程難しい。
サラリーマンがいちばん苦労するのは人脈作りである。会社に所属すれば会社のおかげである程度の人脈は作れる。そこから自分の人脈をどれくらい広げられるかが勝負だ。しかしこれがなかなか難しい。人脈作りは才能がいるのだ。
筆者たちはその難しいこと簡単にやってのける。「残酷すぎる成功法則」のエリック・パーカーは、成功の第一条件は人脈作りの能力としている。筆者はサラリーマンが難しいと言いながら、サラリーマンができないことを脱力系でやっている。それが素晴らしい。
しょぼい起業家たちはサラリーマンを羨ましく思わないだろうが、サラリーマンはしょぼい起業家に憧れている。会社が嫌になって起業を考えるなら、この本「しょぼい起業」を読むべきだろう。人脈ネットワーク(人に愛想よくできるかを含めて)の必要性が良く分かる。
会社を離れた人脈作りに不安を感じるなら、辞める前にネットワーク作りに挑戦するのも良いだろう。上手くできたら起業を考える、できなければ会社に残れば良い。
この本に登場する人たち「えらいてんちょうさん」や「謎の人達」「えもいてんちょうさん」や「おりんさん」その他の皆さんは下町のドラマのように幸せに働いている。それを知るだけでも価値のある一冊。
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