本 「数字を数字を読めない文系バカが日本をダメにする」

2024年2月27日

高橋洋一氏は小泉政権時代に規制改革を進めた大蔵省(現財務省)官僚であり、現在はコメンテータとして活躍している。財務省が主張する緊縮財政政策や借金1千兆円を批判することで知られている。最近はコロナの現状を「海外に比べるとさざ波」「屁みたいなもの」と発言してマスコミの大バッシング受けて内閣官房参与を辞任したことが新しい。

高橋氏は東京大学数学科を卒業して大蔵省に入省した。よく知られているように大蔵省は東大法学部卒が主流であり数学科卒は極めて少い。その数学者の視点から見ると大蔵省は文系バカの巣窟だった。彼は、日本社会全体に萬延する文系バカが国を駄目にしているという。

日本がコロナワクチンをつくれない理由

文系バカの弊害としてコロナワクチンの開発遅れがあげられる。米国を始めワクチン開発に成功した国家はすべて軍事国家である。国家は有事の際に国民を守るためにワクチンを研究する。ワクチン開発は生物化学兵器の研究の延長にある。国家が国民を守るのは当然であるが、日本のメディアと一部の知識人は軍事技術開発という言葉に盲目的に拒否反応を示す。

理性的に考えれば研究は必要だとわかるのだが、彼らは感情論で反対する。だから政府や企業のワクチン開発が進まない。日本学術協会の学者が軍事技術の開発に執拗に反対する姿に現れている。特に文系の学者の主張は度し難い。

同じように憲法改正でも、メディアや文系学者は合理的な判断をしない。彼らはデータや事実を基礎にした合理的な理由を示さず、視聴者の感情を煽るための主張をする。国民もその主張に煽られ情緒的に反対をする。例を上げれば、筆者の「日本のコロナ感染者数はさざ波」を不謹慎とバッシングするために、世界と日本の感染者数のデータを無視した。

なぜメディアは感情的な扇動ばかりするのか、筆者は合理的な思考ができない「数字の読めない文系バカ」がメディアを牛耳っているからと言う。世界情勢や時代の変化を示すデータが理解できず、過去の戦争の呪縛から抜け出せないままにいるからだ。中国や北朝鮮の軍事的脅威に目をむけず、かたくなに政府の安全保障政策を否定する。過去の呪縛に囚われた「文系バカ」の弊害は大きいのである。

目次

序章  「さざ波」コロナで大騒ぎした数学オンチ達

第1章 私は「神童」だった

第2章 何の専門性もない財務官僚は「ただのバカ」

第3章 話を盛ったSFのような「AI」論に騙されるな

第4章 仮想通貨が消えても、ブロックチェーン技術は生き残る

第5章 文系のマスコミ記者こそ「本当のバカ」

第6章 ロジカルな理系思考は、臨機応変に対応できる

第7章 小さな格差は忘れて「専門バカ」を目指せ

数字の読めない「文系バカ」が日本をダメにする 高橋洋一著 WAC

神童だった高橋氏

筆者は神童と言われた。その逸話が240頁のうち34頁に渡って書かれている。簡単に言うと自慢話だがそれが面白い。筆者はとんでもない頭脳の持ち主だった。大谷選手のように凄い身体能力を持つ人間がいるなら、凄い頭脳を持つ人間がいるのも当たり前である。ただスポーツと違って目立ちにくい。東大に合格した知人は「教科書を読んだら十分」と特別な受験勉強をしなかった、それでも合格してしまう。彼らの頭の構造は凡人と全く異なるようだ。

小学生時代、新年度に配られた教科書をその日のうちに読んでしまう。中学生時代は東大の入試問題の数学を解いていた。高校生時代はZ会の出題問題を作っていた。数学は無双で、受験勉強をせずに東大数学科に合格する。数学者を目指すが、ふとした事から大蔵官僚になってしまう(理由は本に書いてある) そして大蔵省で文系バカたちに遭遇する。

山尾志桜理氏や前川喜平氏が神童だったと紹介する雑誌に怒る。山尾氏は、毎日8時間の受験勉強をして東大に合格し、司法試験は7回で合格、そんなものは神童でなく秀才にすぎない。

東大法学部中心の大蔵省へ入った数学科卒

なぜ自慢話がこれほど多いのか、読み進むとその意味がだんだん分かってくる。大蔵省のキャリアは、官僚のなかの官僚と呼ばれ日本の金融行政や政治を支配している。そのキャリアの殆どが法学部卒の文系である。彼らの力は大きいので、大銀行は東大法学部の同期生を採用し毎夜接待と情報収集をさせていた。ノーパンシャブシャブ接待は一世を風靡した。

そんな省に入省した理系の天才数学者という設定が重要なのだ。編集者はなかなかの曲者である。彼が入省すると理系でなければ気づかない問題が山積していた。数学で考えると成り立たない金融政策や経済政策が多くあった。煙たがられながらも問題を解決していくが、大蔵官僚が数学をあまりにも理解できないのに驚き文系バカと名付けたのである。市井の人間からみればそんな風とはとても思えないが、大蔵官僚とは専門性を持たない『ただのバカ』」だった。

文系バカが煽る、AI、仮想通貨の正体

AI、仮想通貨とブロックチェーン、ベイシックインカムなど最近のメディアで話題のことも、数学的思考でバッサバッサと切っていく。生命保険、投資、年金、政治問題、すべて文系バカが誤った情報を流している。真っ向唐竹割りである。メディアは、合理的思考よりも商業主義から危機感を煽る。「News diet」のロルフ・ドベリも同じことを言っている。

裁量労働制に対する批判の嘘、衛星放送会社事件は電波法改革派の官僚が処分された、東レや神戸製鋼の不正データの事件は批判を集めたが現実的な危険はない。メディアの不勉強から誤った情報が流されている。間違った情報が流れるのは、文系バカがメディアを支配しているからだ、と手厳しい。

文系バカはメディアと大学にいる

筆者は新聞を読まないそうである。テレビは仕事のために見るが録画をする。情報は役所の統計や論文などの一次データから得る。一次データは事実を示しているので予測の精度が上がる。それはメディアもできるはずなのに、新聞やテレビは正しい情報を確認しない。

ワイドショーは感情を煽るのが目的だから余計たちが悪い。筆者もワイドショーに出るがその情報は知る必要がないものばかりだ。コメンテーターが知ったそうに言う情報は信頼性はない。政府の人事や機密情報は特にそうだ、人事情報や機密情報は重要になればなるほど知る人の数は限られてくる。人数が限られているので漏らせばすぐに特定される。それが分かれば破滅なので情報をテレビ関係者に漏らす訳がない。

テレビの専門家やコメンテーターがさも知っているように話すのは話芸に過ぎないのである。それに国民は簡単に騙される。国民にもまた文系バカが多い。乗せられる国民も国民だが、事実やデータを無視して煽るメディアの罪は大きい。

太平洋戦争を起こした原因のひとつに大新聞が戦争を煽ったことがある。朝日新聞を筆頭に、新聞は米国と日本の国力の差を無視して、鬼畜米英、撃ちてしやまん、とやり放題だった。山本五十六など英米へ留学した軍人は勝ち目がないと反対したが、新聞は山本ら戦争反対派の軍人を攻撃しテロが発生した。その時もメディアの中心にいたのは文系バカだった。

今もメディアや文系学者は、世界情勢を合理的に解釈せずに、政府の安全保障政策や憲法改正に反対し、国民の感情を煽る。ただ反対のための反対なので何も進まない。国家の危機には、感情を排した合理的な議論が必要になるが、文系バカが主流のメディアは合理的な情報を流さずに過去と同じ過ちを繰り返している。筆者はそれを具体的に指摘する。「数字を読めない文系バカが日本をダメにする」は納得できる。政治好きはたまらない一冊。

Posted by 街の樹